政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
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それから午後にかけて次第に風は強くなり、小雨も降り出した。理仁が帰ってきたときには開いた玄関が風で煽られ、車庫からそこまでの間で彼の肩がびっしょり濡れてしまうくらいだった。都心のこの辺は夜半から明け方にかけて直撃するようだ。
どんどん強くなる雨風に募っていく不安。食事を終え、リビングの窓から外を見ているうちに居ても立ってもいられなくなる。
「一度見に行ってこようかな」
実家にいて、ビニールハウスがすぐ見えるところにあるならまだしも、離れているため今の状況がまったくわからないのが怖い。
もしかしたら、すでに強風に煽られてビニールがめくれ上がっているかもしれない。中に入り込んだ風でハウスが浮き上がっているかもしれない。
そう考え始めると、すべてが悪い想像に進んでいく。
(……ダメだ。こうしていてもしょうがない)
「やっぱり行こう」
菜摘が踵を返すと、そこに理仁がいた。
「どこへ行くつもり?」