政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
「畑や川の様子を見に行って命を落とす人のニュースは、菜摘だって見たことがあるはずだ。菜摘はそうなりたいのか」
首をふるふると横に振る。そうなりたいわけがない。
そんなニュースを耳にするたびに、どうして見にいったのか不思議に思っていた。暴風雨のときは危険だってわからないの?と。
それと同じことを今まさに菜摘もしようとしていた。後先考えず、危険も顧みずに。
「だろう? 俺だって、そんな目に菜摘を遭わせたくない」
ゆっくり息を吐き出し脱力してはじめて、全身に力が入っていたことに気づく。
今朝から、雨風が強くなっていくごとに体が緊迫感に包まれていくのを感じていた。ニュースと空模様にずっと意識をもっていかれ、台風が通り過ぎた地域のリポートを見るたびに不安の上塗りをして。
「菜摘はイチゴになると見境がつかなくなるな」
困ったように理仁が言う。鋭さをひそめ、優しい眼差しで菜摘を見つめた。