政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
パッと見た理仁の顔に照れが浮かぶ。決まりが悪そうに鼻の下を擦った。
「頼んで正解だったな。ひどい有様だ」
理仁によると、最悪の事態を想定して昨夜のうちから手配していたという。
菜摘が取り乱している裏で、きちんとその気持ちを汲んで手を尽くそうとしてくれていたのだ。
いくらやる気があっても、大地とふたりきりでは途方もない作業。人の手があるに越したことはない。
「ありがとうございます!」
立ち上がり、目いっぱい頭を下げる。
「お礼は全部終わってからにしような」
理仁はそう言って菜摘の頭を優しく撫でた。
「……はい」
束の間、絡み合った視線に胸が熱くなる。
ピンチに颯爽と現れた理仁が、嵐とは違う鮮烈な爪痕を心に残したのを菜摘はまざまざと感じていた。
理仁は静かな笑みを浮かべ、パンパンと手を叩いて集めてきた人たちの注意を引く。
「それじゃ、早速始めようか!」
軽く手を上げて応じる仲間に菜摘と大地は「よろしくお願いします!」と声を張り上げた。