政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
「菜摘の実家は俺の家も同然じゃないか。やってあたり前」
「でもまだ……」
結婚はもちろんプロポーズの返事すらしていないのに、そこまで言ってもらえる自分はなんて幸せだろう。
「菜摘に断らせない魂胆もあるのを忘れるな」
いたずらっぽくツンと頬を突かれ、菜摘はなにも返せずに落ち着きなくお尻をもぞもぞと動かした。
車が走り出すと、心地よい揺れとほどよい暗さが眠りを誘う。
(ここで眠っちゃダメダメ。日高さんだって疲れてるんだから)
懸命に目を開けようとするが、睡魔が菜摘の決意を上回ってくる。テープでもあれば瞼に貼って開けておくのにと思うが、あいにくそんなものはない。
「眠いなら眠っていいよ。着いたら起こしてあげるから」
「いえ、眠くなんて全然」
首をぶんぶん横に振り、元気をアピールする。
ところが欠伸を何度も噛み殺し、腿や頬を抓るのに効果があったのは最初のうちだけ。
(ほんのちょっと目を閉じよう。ほんとに一瞬だけ。すぐに開けるから……)
重くてたまらない瞼を閉じたが最後。意思に反し、菜摘はすーっと波が引いていくように眠りについた。