政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
◇◇◇◇◇
「……み、菜摘」
遠くで名前を呼ぶ声がする。
深く静かな暗闇で、何度となく菜摘を呼ぶ声がものすごく優しくて、それをもっと聞いていたいような、それでいてその出所を探りたいような不思議な感覚に身を委ねていた。
「つみ……菜摘、着いたよ」
最後のひと言と、頬へのやわらかい感触で瞼をゆっくり開いていく。
「――っ」
目の前に理仁のドアップがあり、息を吸い込むとともに一気に目が覚めた。
「着いたよ。よっぽど疲れてるみたいだけど歩ける?」
「あ、歩けます」
「抱っこしてあげようか」
「抱っこ!? だ、大丈夫です。歩けます。なんなら走れますから」