政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
急いでドアを開けようと思ったが、ロックされていて開かない。
「そんなに慌てなくてもいいよ。無理やり抱き上げたりしないから」
クスッと笑いながらロックを解除する。
変に意識しすぎている自分がつくづく恥ずかしい。
早いところ車から降りようとしたが、運転席からひと足早く助手席側へ回った理仁がドアを開けて菜摘の手を引き上げた。その力強さが、今日の作業風景を思い出させる。
重い資材を難なく運ぶ姿や、応援に駆けつけてくれた人たちへの的確な指示。無駄のない動作には、つい自分の作業の手を止めて見惚れるほど。額から頬を伝い首筋を流れる汗がやけに色っぽくて、ひとりどぎまぎさせられた。
「……すみません、ありがとうございます」
そんな一つひとつのシーンを思い返したため、目をぎこちなく逸らす。
動揺しているのが丸わかりだったか、理仁が笑う気配がした。今、その顔を見る勇気はない。
「おかえりなさいませ。お疲れでしょう」
にこやかに出迎えてくれた美代子の顔を見て、なぜだか妙にホッとした。
「美代子さん、お風呂の用意は?」
「もちろんできておりますよ」
もしかしたら理仁が美代子に連絡を入れておいてくれたのかもしれない。理仁に「先に入っておいで」と言われ、遠慮なくそうさせてもらうことにした。