政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~

◇◇◇◇◇

急いで仕事に戻った郁子を見送り、菜摘が店を出て歩きはじめたそのとき。


「菜摘さん、待ってください」


後ろからかけられた声に足を止めて振り返ると、エリカが小走りにやって来た。店で見かけた白いユニフォームではなく、チョコブラウンのサマーニットにサーモンピンクのパンツというエレガントなスタイルだ。

(いったいなんだろう……)

彼女との間には理仁を介した関係性しかなく、この前紹介されたときにどことなく不穏な空気を感じ取ったためつい身構える。それはエリカが理仁の昔からの友人という羨ましい立場だからにほかならず、菜摘が勝手に感じているだけに過ぎないのだけれど。


「今日は私も仕事が終わりなの。駅までご一緒していい?」
「あ、はい、もちろんです」


フレンドリーに言われれば、菜摘に断る選択はない。理仁の友人だから、できれば仲良くなりたいという気持ちもあった。
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