政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
駅に向かってエリカと並んで歩きだす。夕方まであと少し。日差しはまだ強く、ハンカチを額に押し当てて滲んだ汗を拭った。
「菜摘さんもご両親を亡くしているそうね」
エリカが唐突に切りだす。まさか両親の話をされるとは思わず、言葉に詰まって反応が遅れる。
「……はい、そうですけど」
理仁から聞いたのだろうか。そんな踏み込んだ話までしていたのかと、ちょっとだけ嫌な気分になる。
(でも今、〝も〟って言わなかった? 誰のことを言ってるんだろう)
菜摘は目を瞬かせて隣のエリカを見た。
「理仁くんもそうでしょう? だからシンパシーを感じた部分があるのかなって、ふと思ったの」
「えっ……?」
エリカの放ったセンセーショナルな言葉に耳を疑う。
(『理仁くんもそう』? 理仁さん、ご両親を亡くされてるの?)