政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
でもそんな話はまったく聞いていない。美代子も、菜摘たちの生活が落ち着いたら理仁の両親の家に戻ると言っていた記憶だってある。
「……あれ? 彼から聞いてない?」
「はい……」
知ったかぶりはできない。正直に知らないと答える。
するとエリカのまとう空気が、心なしかパッと明るいものに変化したような気がした。
「大事な話なのに聞かされてないの?」
驚きと憐れみが混じったような言い方だった。急に態度が上から目線になる。
「菜摘さん、彼と結婚するんでしょう? それなのに? 家族のことってとっても大事な話だと思うけど」
エリカの言う通りだし、菜摘もそう思う。お互いの気持ちはもちろん、その家族も大切だ。
結婚を意識していない恋愛の段階ならまだしも、最初から結婚ありきで進んでいたのに、理仁はなぜ話してくれなかったのだろう。
ミレーヌのパーティーで菜摘が打ち明けたときに、理仁も〝じつは俺も〟と話してくれてもよかったのに。