政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~

◇◇◇◇◇

「あれ? なんでねえちゃんがいるんだよ」


菜摘が久しぶりに自宅のキッチンで夕食を作っていると、アルバイトから帰宅した大地がつれないひと言を浴びせてきた。


「まるでいたらダメみたいな言い方しないで」
「そうじゃないけど、なんであっちに帰らないんだよ」
「たまにはいいじゃない。だいたいここは私の家でもあるんだから」


母親のように手洗いとうがいをするよう大地に促し、完成したチャーハンと中華スープをダイニングテーブルに運ぶ。

エリカと駅で別れた後、菜摘は路線を変更して実家へ帰ってきた。どうしても理仁のところへ帰る気になれなかったのだ。

理仁にはメッセージアプリで【たまには大地に夕食を作ってあげたいので、今夜は実家に泊まります】とだけ送っておいた。伝え方が素っ気なかったなと後悔したが、かわいいスタンプでチャラにする気持ちにもなれない。

エリカが突然あんなことを言ったのは、おそらく彼を好きだからだろう。最初に彼女を見たときになんとなく感じた不穏な空気はそのせい。
< 251 / 307 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop