政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~

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ミレーヌの本社近くにある高級ホテルでは、パティシエたちが試行錯誤を重ねて作った今年のクリスマスケーキの見本がずらりと並んでいた。理仁が専務に就任した直後から開催されるようになった社内コンテストは、スイーツジャーナリストを中心としたメディアも招待され業界からも注目されている。

グランプリ以下、上位五品が後日発表になり、その年のクリスマスケーキとして各店で販売される予定だ。

エリカをはじめとしたベテランのパティシエから若手まで、エントリーした作品は全部で十五。スイーツはもともとカラフルで目を楽しませるものだが、クリスマスケーキはまた格別。デザイン性に富み、どれも見目麗しい出来栄えだ。

招かれた社員やジャーナリストたちは、テーブルごとに置かれたケーキをひとつずつ試食し、見た目、味、真新しさなど七項目を審査し採点表に点数を付けていく。パティシエたちのアピール合戦も見もののひとつ。理仁も採点表を片手にじっくりと試食していった。


「理仁くん、私のはどうかな」


七番目のテーブルで待ち構えていたのはエリカだった。


「山崎さん、ここでは一応〝社長〟で」
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