政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~

ほかの人に聞こえないよう小声でたしなめる。プライベートならまだしも、仕事中は引きずりたくない。

エリカはペロッと舌を出して肩をすくめる。

社内でもエリカと理仁が高校時代の友人同士だと知れ渡っているが、だからこそ慣れ合いは避けるべき点。腕のたしかなパティシエのためミレーヌにとっては大事な人材だが、彼女はときに距離感を見誤ることがあり、その点だけは理仁も対応に苦慮していた。

彼女が作ったのはホワイトとピンクのコントラストが鮮やかなケーキ。外側はミルキーでクリーミーなホワイトチョコのムース、内側は甘酸っぱいイチゴのコーティングが丁寧に施されている。カットすると、白、赤、緑といったクリスマスカラーが現れるのが斬新だ。


「さすが山崎さん。あっと思わせるのも上手だね」
「理、じゃなくて社長にそう言ってもらえるのがなによりもうれしい」


イチゴのジュレ、イチゴのクリーム、ピスタチオのビスキュイの構成は王道ながらも洗練された味わい。さすがフランスで長く修業してきただけのことはある。
だが、ほかのパティシエたちも負けてはいない。これは接戦になりそうだと、理仁はワクワクした。


「菜摘さんと話し合った?」
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