政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
エリカが唐突に妙なことを口走る。
「……なに、どういう意味だ」
どうしてエリカから菜摘の名前が出てくるのか。それも話し合ったかどうかの具体的な内容を突いてまで。
「この前お友達とうちの店に来てね、そのときにちょっと話したの」
友人と会うとは言っていたが、青山店に行ったというのは初耳だ。
たしか四日前だったはず。それ以降、菜摘はハウスのメンテナンスや今冬向けの苗の準備で実家に泊まりきり。簡単なメッセージのやり取りだけになっていた。
なるべく早いうちに和夫に挨拶に行き、入籍を済ませたいと考えているが、なかなかタイミングが合わない。
「それで彼女と何の話を?」
「理仁くん、ご両親のこと話し――」
「山崎さん、今回のこのケーキのコンセプトですけど」
気になるひと言を彼女が放ったところでスイーツジャーナリストのひとりが声をかけてきた。エリカは業界でも有名なパティシエのため注目度も大きい。
理仁は彼女に〝また後で〟と目で伝え、そのテーブルを離れた。