政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~

「理仁くんも両親を亡くしてるって」
「なんでそんなこと」
「結婚するんだもの、当然知ってると思うじゃない」


エリカは眉根を寄せて言った。不満をあらわにした表情だ。

そこで理仁は、ふと違和感を覚える。


「〝も〟ってなに」


なぜエリカが菜摘の両親のことまで知っているのか。
エリカは「ちょっと小耳に挟んだだけ」とそっぽを向いた。

菜摘との結婚はまだ公にしておらず、社内で知っているのは秘書の戸田とエリカだけ。戸田が口を滑らせるとは思えないから、エリカ自身が調べたのだろう。

だとしたら、なぜそんなことを。

理仁の両親が亡くなったのは高校三年生のときだった。高速バスに乗車中の事故に巻き込まれ、ふたりいっぺんに。――菜摘の両親が亡くなったのと同じ事故で。

菜摘に初めて会ったのは、バス会社が執り行った合同葬儀だった。
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