政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
「理仁くんは自分と同じ境遇の彼女に同情しただけなんでしょう? だからいきなり結婚なんて」
「同情? まさか」
菜摘に話せずにいたのは、当時の辛い記憶を思い出させたくなかったから。だが、いつまでも黙ったままでいるつもりもなかった。叔父たちに紹介するまでには話そう。そんなふうに考えていた。
「それじゃ、イチゴのためなんでしょう? 彼女のおじいさんが開発を成功させたっていう新品種のイチゴがほしくて」
「……まさか菜摘にそう言ったのか」
脅すつもりはないのに自分でも驚くほど低い声になった。そのせいかエリカの頬がわずかに引きつる。
菜摘がそれを聞いてどう感じたか、簡単に想像がついて胸がざわつく。
好きだというのは口先だけ。本当の目的はファインベリーだったのかとショックを受けているだろう。
素直な菜摘のこと。エリカの言葉をそのまま信じてしまったに違いない。
だからこの四日間、理仁の元に帰ってこないのだ。
(それなのに俺はそんなことも知らずに呑気に過ごしていたなんて、とんだ幸せボケだ)
菜摘の気持ちを掴んで浮かれていた証拠。