政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~

「だ、だってそうでしょう? でなきゃ農家の娘との結婚なんて考えるわけがないじゃない。それも経営が傾いたイチゴ園なんて。理仁くん、ミレーヌの社長なのよ?」
「だからなに」
「なにって……」


怒りを滲ませ、鋭くした目で射抜いた。エリカが忙しなく視線を泳がせる。


「俺はミレーヌの社長である前にひとりの男だ。どうして菜摘にそんなことを言った? 傷つくのがわかって言ったんだろう?」


声こそ荒げていないが、親しい間柄の相手に対するものとは思えないほどひたすら冷たく言い放つ。


「……理仁くんこそ、私の気持ちなんてまるで考えてないじゃない」


エリカは膝の上で手を握りしめ、唇をわななかせた。
いったいなんの話をしているのか。


「あとからのこのこ出てきて、いきなり婚約者だなんて納得がいかないって言ってるの」


どうしてエリカを納得させなくてはならないのか。
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