政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~

「な、なによ! ミレーヌが超人気店になったのは私がいるからでしょ? それなのにそんなこと言うの!?」
「たしかにエリカさんの名前が宣伝になったのはあるだろう。でもうちにはほかにも優れたパティシエがたくさんいる。彼らのおかげでもあるのを忘れないでもらいたい」


エリカの顔が怒りに歪んでいく。眉はつり上がり、歯をきりっと食いしばった。美人パティシエが台無しだ。


「とにかく今後、菜摘を傷つけたらただではおかないから、よく覚えておいてくれ」
「ばっかみたい! なんなのよもう! くだらなすぎて付き合っていられないわ!」


冷静さを失った甲高い声が狭い控室内に反響する。エリカは手にしていた白いコック帽をフロアに乱暴に叩きつけ、鬼の形相で控室を出ていった。
大切なユニフォームを大事に扱えないパティシエに未来はない。

理仁はそれを拾い上げ、足早にホテルを後にした。行く先はひとつ、菜摘の元へ。
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