政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
「葬儀のときに菜摘が俺に差し出してくれたハンカチだよ」
瞬間、菜摘の記憶の中にそのときの光景が蘇る。理仁に無言でハンカチを差し出す自分の映像だった。
先ほど理仁から話を聞いたときにはあげたままになっているとは思わず、それが理仁の手もとに今でも残っているなんて想像もしなかった。
そのとき不意に、理仁が以前口走った言葉を思い出す。
『何度ももらいっぱなしにはできない』
たしかパーティー会場で彼から万年筆をもらったときのことだ。
「ずっと持っていてくれたんですか?」
「挫けそうなときにこれを見ると、なんとなく勇気をもらえたものだよ」
亡くなった母親が作ってくれたハンカチを、自分とはまったくべつの場所で大切にしてくれていた人がいた。そう思うと、なんともいえず胸が熱くなる。
「理仁さん、ありがとうございます」
「お礼を言うのは俺の方。このハンカチが菜摘と俺を繋いでくれたんだろうな」