政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
和夫は、リクライニング状態のベッドに預けていた体を起こして頭を下げた。
「日高さん、菜摘をどうかよろしくお願いします」
「はい。菜摘さんを全力で守っていきます。農園のこともお任せください。詳細につきましては、また追ってお話に伺います」
下げた頭を戻した理仁は、胸ポケットから封筒を取り出した。
「早速で申し訳ありませんが、こちらに署名をお願いしてもよろしいでしょうか」
和夫が驚いたように目を見開く。
その中から理仁が和夫に差し出したのは、ふたり揃ってサインを済ませた婚姻届だった。一方の証人欄にはすでに理仁の伯父の名前が記載されている。
昨夜、理仁に連れられて彼を引き取った伯父と伯母への挨拶は済ませていた。とても気さくな両親で、理仁が言っていたように菜摘を歓迎してくれたのはなによりうれしかった。
でもそれは、理仁が事前に菜摘とのことを細かに話してくれていたおかげ。ふたりから、ここ数ヶ月の理仁が口を開けば菜摘の話ばかりだったと聞き、照れくささよりも幸せな気持ちになれたのは大きいだろう。