政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
「お許しをいただいたばかりなのにすみません。ですが、菜摘さんとできるだけ早く夫婦になりたいと思いまして」
「いえいえ、そこまで想われる菜摘は幸せですね。すぐにサインさせていただきます」
筆記具を探してベッドサイドを見た和夫に、理仁がすかさずペンを差し出す。それは以前、菜摘が理仁にあげたイチゴ柄のボールペンだった。
思わず菜摘は「あっ」と口走る。
「これ、菜摘の?」
和夫の記憶にもあったのか、受け取ったペンをまじまじと見つめる。
「そうなんです。初めて佐々良さんの農園に伺ったときに菜摘さんから借りたまま、いただいてしまって。宝物です」
理仁がまだそれを持っているとは思いもしなかった。使ってくれていたとしてもインクがなくなるか書けなくなるかして、とっくに破棄されたと思っていたから。
ハンカチ同様に理仁が大事に使っているのを知り、そのうえ宝物だと言われてものすごくくすぐったい。
和夫に無事サインをもらい、理仁と菜摘は病院を後にした。