政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
カップをテーブルに置いてキッチンに駆けつける。
「大丈夫ですか?」
菜摘の声に振り向いた理仁は、苦笑いで肩をすくめた。
ネイビーのエプロンがよく似合って素敵だと思ったのも束の間、シンク回りにはビーフシチューに必要のなさそうな野菜類が転がり、下の収納から取り出した数々の鍋やフライパンが所狭しに並んでいた。
いったいなにが起きたのかと目を疑うような光景。最初こそ驚いたものの、菜摘はそれを見て思わずクスクス笑いだした。
理仁の仕事ぶりを直接見たことはないが、少なくともパーティーや農園に視察にきたときの彼の毅然とした様子やスマートな仕草からは想像がつかない。料理に関しては壊滅的というギャップが、かえって愛しく思えた。
「参ったね。俺に料理は不向きと見える」
ほとほと困ったという様子でおどける。いよいよ認めるしかなくなったらしい。
「あ、今〝だから言ったでしょ〟って思っただろう」
「いえ、思ってないです」