カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~
きょとんと首を傾げると、店主は穏やかに続ける。
「プレオープンにご招待したとき『妻も一緒に連れて来て良いですか』と尋ねられたんです。和菓子がお好きだとうかがいましたので、腕によりをかけて作りました」
想像していなかったセリフに目を丸くする。
今日は、千里さんがわざわざ頼んで連れて来てくれたんだ。
そう知った瞬間、心に満開の花が咲いたように明るく嬉しい気持ちになった。
改めて考えてみれば、たしかに、私は和菓子が好きだ。でも、ふたり暮らしを始めてから自分のためにお金を使ったことはないし、彼の前で和菓子を口にした記憶もない。
なぜ好みを知っているんだろう?
『桃さんは、甘いものはお好きですか?』
『はい。特に和菓子を好んで食べます』
そのとき、ふと思い当たった記憶は、お見合いで庭園を歩いた際の会話だった。
もしかして、あのなにげない一言を覚えてくれていたの?