カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~
つい、声が出た。
脳裏をよぎったのはオールバックの男性だ。
バーで出会ったあの人は目の前の彼とは違い、どこか危険な色気のある人だった。爽やかで真面目そうな若旦那と同じ名前だなんて、神様のイタズラだろうか。
「僕の名前になにか?」
「あ、いえ。なんでもないんです。でも、初対面なのに、どこかで会った気がして」
「そうでしょうね。実は、桃さんとは一度お会いしているんですよ」
思いもよらぬセリフに、目を見開く。
心当たりがなく、必死に記憶を遡っていると、楽しそうに顔を綻ばせた彼は、やや首を傾けて続けた。
「ご友人の優子さんの結婚式で、少しだけお話しをしたんです。覚えていませんか?」
端正な顔立ちと見惚れるほど様になっている和装に、ピンとくる。そういえば、お手洗いに向かう途中で似た男性とぶつかったような。
「もしかして、襟を整えてくださった方ですか?」
「はい。まさかここで再会するとは驚きました。初めて会った時から、可愛らしい方だなと思っていたので」