カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~
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 部屋に戻ると、布団が敷いてあった。綺麗にシーツをかけられており、千里さんが用意しておいてくれたようだ。

 至れり尽くせりの旅館のお客さまのようで、申し訳なくなる。

 急遽泊まることになって、嫌な顔ひとつせずに迎え入れてくれただけでもありがたいのに、おもてなしをされている気分だ。

 やがて布団に入った私は、ふすまの向こうに気配を感じながらも、ゆっくりと目を閉じた。

 静寂に包まれた家はとても落ち着く空間で、すぐに夢の中へと沈んでいったのだった。


「ん……」


 深夜、ふと目が覚めた。スマートフォンには、午前一時の表示が出ている。

 あれ?

 枕から顔を上げて、ふすまの向こうから微かな明かりが漏れていると気がついた。ぼんやりとした光はたまに人の影に遮られるように揺れている。

 こんな時間に、まだ起きているのかな。


「千里さん?」


 声をかけるが返事はない。

 気になって、おずおずとふすまを開けると、パソコンをひらいたままテーブルに突っ伏す影が見えた。

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