カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~


 すると、大きく開いた袖口からするりと骨張った長い指が侵入してきた。

 逆側の手は簡単に帯を解いていく。


「なっ、なにをしているんですか」

「クリーニングに出していた祖母の浴衣が見つかったから、着替えさせてあげようと思って。得意なんだ。着物を着付けるのも、脱がすのも」

「ひとりでできます!」


 慌てて抵抗しようとしたものの、後ろからがっしり抱きしめられているため身動きがとれない。

 一瞬身の危険を感じたが、彼は素肌を遊ぶように撫で、すぐに手を引いた。

 頭の上に薄い浴衣が乗せられる。


「本気で脱がすわけないだろ。桃が可愛いくて構いたくなっただけ。ほら、早く着替えて涼しい部屋においで」


 確信犯の表情に、なにも言えなくなった。

 またからかったのね?この人は本当に心臓に悪い。

 ひらりと手を振って脱衣所を出ていく背中に、緊張から解放された安堵と甘い期待を抱いてしまった自分への羞恥で、複雑な視線を向けたのだった。


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