カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~
以前は夜更かしを止めようとしていたのに、すっかり立場が逆転しており、自分でも少しおかしかった。
そのとき、隣にしゃがみ込んだ彼に、つぅっと目元を指の背で撫でられる。
突然触れられて驚くと、小さく息を吐いた千里さんは軽々と私を横抱きにした。
「クマができてる。頑張りすぎ」
「きゃっ」
そのまま自室へ運び込まれ、優しく布団の上へ下ろされる。
「このまま添い寝で寝かしつけてあげないとダメ?」
「す、すぐに寝ます。ごめんなさい」
「いい子だね」
長い指で私の髪をといた彼は、頭を撫でて離れていく。
「若女将は店の顔だから焦るのもわかるけど、体が資本だから、自分を大切にするんだよ」
千里さんは、そう言い残して隣の部屋へ戻った。後ろ姿が完全に消えるのを見送り、心の中で呟く。
今夜も、なにもする気はないのね。
ふすまが閉まり、少しだけ心がざわめいた。
一緒に暮らし始めてから、一度も同じ布団で寝た夜はない。