カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~
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「桃さん。表が空いたので、代わりますよ。今のうちに昼休憩をとったらどうです?」


 七月のある日、バックヤードで仕立ての納品表を確認していると、鳴海くんに声をかけられた。

 ここで働き始めて一週間、立場上は向こうが教育係なのだが、未来の若女将として認識しているようで、常に敬語で話しかけてくれる。

 平日ということもあって客足が落ち着いているため、店内は数人の従業員だけだ。抜けるのにはちょうどいいタイミングだろう。


「あ、そうだ。美澄さん、今日は午後から出勤ですよね。そろそろ来る頃じゃないですか?」


 鳴海くんの言葉に頷いた。

 時刻は午後一時だ。千里さんは、例の和カフェの責任者との打ち合わせがあり、午前中は出張だった。

 昼休憩から戻ったら、顔を見れるだろう。

 鳴海くんに納品表を引き継ぎ、店頭へ戻る。テナントを通って従業員口へ向かおうとした、そのときだった。


「すみません」


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