カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~


 凛とした若い女性の声がした。

 視線を向けると、ラベンダー色の薄物(うすもの)を身につけた華奢なシルエットが視界に映る。

 アーモンド型のくっきりとした瞳に、スッと通った小さな鼻、薄く紅をひいた唇は、精巧に作られた人形のように美しい。

 すごく綺麗な人だ。同い年くらいに見えるけれど、普通の人とは違う華があって、和服がよく似合う。

 素早く気を引き締めて、接客モードに入った。


「いらっしゃいませ。なにをお求めでしょうか」

「あ、ごめんなさい。買い物に来たのではないんです。美澄さんは、いらっしゃいますか」


 思わぬ名前が飛び出して、一瞬思考が停止した。

 千里さんをわざわざ訪ねてきたのだろうか?お知り合い?


美冬(みふゆ)?」


 聞き慣れた低い声が耳に届く。

 ちょうどテナントに入って来たのは、ちょうど話に出ていた若旦那だった。


「あ、千里。今からお仕事なのね」

「あぁ。どうしてここに?店に来るなんて珍しいな」

「あなたに話があって来たのよ。会えてよかった」

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