カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~

 甘い響きに、くらりとした。

 惚れていると初めて言われた。彼の口から、こんなセリフが飛び出たことはない。


「こんなときまで冗談はやめてください」

「嘘じゃないよ。まだ、俺が君を騙してからかっていると思っているの?」

「だって、今まで好きのひとつも口にしなかったのに、いきなり惚れているだなんて言われても戸惑います」

「俺は君と同じく結婚には期待していなかった。……でも、他の男が桃に近づいたと知って、これ以上ないくらい心がかき乱されてる。素直で芯が強くて穏やかな君は心の支えで、いつも癒されていたんだ。今までは自分でもその感情に名前はつけられなかったけれど、やっと、君への気持ちが愛だと気づいた」


 夫婦にみえないと言われて、わかっていたつもりなのに少し傷ついた自分がいた。千里さんはなにがあっても余裕があるし、独占欲なんてないと思っていた。

 それが、こんなじれったい声で本音をこぼされたら、たまらなくなる。

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