哀恋の先で、泣いて。
何気なく決めたバイト先で出会えた麻弥、私の出来が悪かったから話せた麻弥の隣が一番心地よかった。

心の底から幸せで、この幸せが壊れるなんてこれっぽっちも思っていなかっただろう。





「別れたい」

こんな言葉を大好きな人に発している未来の自分を想像していなかっただろう。


「そう言われると思ってた」

大好きな人に悲しそうに頷かれるなんて、一年前の私は思ってもみなかっただろう。






「ごめん」と薄っぺらい私たちの声が重なる。彼は私が言おうとしていることを知っていたし、私はあの日々には戻れないと知っていた。

あの楽しかった、幸せだった日々には戻れないってわかっていたから、振られるのをずっと待っていたのに麻弥は言わなかった。
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