哀恋の先で、泣いて。
彼が買ってきてくれたパックジュースは一口飲んだまま、私が強く握っているせいでぬるくなっている。

この空気に耐えるくらいなら言ってしまえ、と意を決して話を切り出そうとしたとき、彼が先に口を開いた。





「話って何?大体わかるけど」
「わかるの?」

「うん、でも気持ち聞かせて。最後くらい」




"最後くらい"、たったの6文字なのに私の心がずしりと重くなった。最後くらい、最後だから伝えたいことがたくさんあるのに、言葉に詰まっている私は最初から最後まで最低な人間だろう。

いままでも伝えていなかったのに、だから"最後くらい"と言われているのに、黙ってしまう私は最低だろう。




私、星羅 椿(せいら つばき)と目の前の彼、碧 麻弥(あおい まや)は付き合って1年半になる。

私が高校2年生のとき、バイト先でひとつ上の麻弥に出会った。高校も違うし、家が近いわけでもない麻弥と距離が近づいた理由はシフトが重なることが多かったから、だと思う。
< 6 / 26 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop