哀恋の先で、泣いて。
「すごいじゃん」
「前より上手くなってる」
「だから大丈夫って言ったじゃん、成長するんだよ」


心臓がとくんと音を立てて、驚くくらい激しく上下して、ドキドキと音がした。

バイトに行くのが楽しくなって、バイト先で彼を見るとうれしくなって、バイト先に彼がいない日は悲しくなって、やる気がどこか遠くに飛んでしまって。



いつの間にか頭の中が麻弥でいっぱいになっていた。



麻弥はただの後輩として私を見ていると思っていたし、"私だけ"じゃなくてみんなに優しいからそこに私のような感情はないと思っていたし、それ以上の存在になりたいなんてバカげたことちっとも思っていなかった。

自分の想いを伝えられない私は、天邪鬼の私は、この気持ちを仕舞って、いつも通り麻弥と話すことを選んだ。
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