HOME〜私と家族〜
レポート8
「ところで拓也、進路はどうするの?」

和やかだった夕食の空気が、少しだけビシリと固まる。
有給を取ってまで、お母さんがタクに話があると朝言っていたのはこのことか。

「とりあえず、進学を考えてるけど」
「そう。居候だからって遠慮しないで、好きな道に進みなさい」
「それは…」

タクがなにか言い淀む。

「俺、流星大学に行こうと思う」
箸をおいて、お母さんの顔を正面から見据える。
そのタクの目からは、強い意志を感じた。

「流星大学って…難関国立大学じゃない」

お姉ちゃんが、目を見開く。
私にはわからないけど、大学生のお姉ちゃんがそんなに驚くんだから、相当難関なのだろう。

「確かタクは理系だったよね?」

こないだ買ってた参考書、数学と物理だったような。
ただでさえ理系は文系より難しい傾向があると聞く。

「わざわざ国立じゃなくても」
「いや、そこの理学部で学びたいことがあるんだ」
「うちのお母さん、こう見えても結構稼いでいるよ」

そうなのだ。
女手一つで育ててもらってるけど、慰謝料も養育費ももらってないと聞く。
純粋にお母さんの稼ぎで、お姉ちゃんと私を学校に行かせてくれている。
特にお金に不自由したこともない。
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