黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
 もう少しで追いつけそうだ。

 私が小走りで追いかけていると、伊尾さんは足を止めた。

 花束を片手に持った彼は、ひとり立ち止まりじっと足もとを見つめていた。


 ……どうしたんだろう。
 
 
 少し離れた場所にいるせいで、伊尾さんの表情はよくわからないけれど、彼の視線の先にはなんの変哲もないアスファルトがあるだけだった。
 
 不思議に思った私が歩調をゆるめたとき、「伊尾くん」と誰かが彼の名前を呼んだ。

 その声に、伊尾さんも視線を上げる。

 そこには、ひとりの女性が立っていた。

 伊尾さんより、少し年上だろうか。
 ショートカットからのぞく首が細く綺麗で、さわやかな印象の女の人だった。

 そしてその人は、五歳くらいの男の子と手をつないでいた。

 伊尾さんを見つけた男の子は、彼の足もとに走り寄る。
 伊尾さんは笑い、片手で男の子を抱き上げた。

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