黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
「ナイフでロープを切るから、動くなよ」
 
 私も速くなった鼓動を落ち着かせるために前を向き、「はい」とうなずく。
 
 伊尾さんがナイフを取り出し、私の手首を縛るロープを切りはじめる。
 
 硬くて太いロープだから簡単には切れなくて、ふたりだけの部屋に沈黙が流れた。

「――佐原」

 その沈黙を破るように、伊尾さんが私の名前を呼んだ。
 いつもとは少し違う、優しさと切実さをはらんだ声だった。

 私は前を向いたまま「はい」と答える。

「お前が好きだ」

 その言葉に、一瞬頭が真っ白になった。

 好きって、伊尾さんが、私を……?

 体中の血液が、一気に逆流したかと思った。
 心臓が、ありえないくらいの速さで脈を打ちだす。

「えぇ……っ!?」

 慌てて体をひねり振り返ろうとすると、伊尾さんは舌打ちをした。

「お前、動くなって言ってるだろ」

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