黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
 伊尾さん、少し気持ちの切り替えが早すぎませんか。と文句を言いたくなったけれど、私もすぐに気を引き締めた。
 
 
 とりあえず、呉林くんに気付かれる前に、ここを出ないと。
 
 長身で身体能力の高い伊尾さんは、窓や壁のでっぱりを足掛かりにしてここまで登ってきたけれど、足を痛めた私が同じようにして脱出するのはむずかしい。
 
 どうすればいいんだろう、と伊尾さんの横顔を見上げたとき、廊下から足音が近づいてくるのが聞こえた。
 
 どうしよう、きっと呉林くんだ。
 
  私が青ざめると、伊尾さんは冷静な声で囁く。

「佐原は、隠れてろ」

 彼は部屋のすみに積み重なるように置かれた段ボールを指さす。

「でも……っ」

 そうなったら今度は伊尾さんが危険だ。
 
 さっきまでの呉林くんは、マトリが自分の正体や居場所を知らないと思っていたからあんなに余裕のある態度をとっていた。
 
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