黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
 さっきまで元気がなかったんですが、伊尾さんの顔を見た途端元気になりました。

 心の中でそうつぶやく。

「取り調べや家宅捜索は順調ですか?」

 私がドキドキを押し殺しながらたずねると、伊尾さんは「あぁ」とうなずく。

「大量の覚せい剤や合成麻薬を押収したし、顧客リストも出てきた。その処理で、しばらくは忙しいだろうな」
「そう、ですか……」

 この先も伊尾さんとはすれ違いの生活が続くのかな。
 しょんぼりと肩が落ちそうになって我に返る。
 
 伊尾さんとの時間よりも、ひとりでも多く違法薬物の被害者を減らすほうがずっとずっと重要だ。
 
 そう自分に言い聞かせ、気を引き締め直す。

「そういえば伊尾さん。その顧客リストの中に東北に住む人もいたんですか?」

 さっき聞いた先輩たちの世間話を思い出してたずねた。

「いや、いないけど」

 いないんだ……。
 
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