ズルくてもいいから抱きしめて。
高木さんとしばらく立ち話をしていると、後ろの方で物音がした。

「あっ、高木さん!ここに居たんですね!」

後ろに近付いて来た誰かが高木さんに声をかけた。

あれ、、、?

この声、、、

うそ、、、

そんなはずない、、、

そんな偶然、、、

私の頭の中は一瞬でパニックになった。

どうしよう、、、後ろを振り向くのが怖い。

でも、振り向かないと確認出来ない。

「姫乃?どうした?大丈夫か?」

私の異変に気付いた樹さんが、私の背中に手を当てながら心配そうに尋ねた。

「うん、、、」

高木さんの方に目をやると、高木さんは複雑そうな顔をしていた。

私はその声の人物を確認するため、ゆっくりと後ろに振り向いた。

その瞬間、目の前の人物を見て衝撃が走った。

「えっ、、、姫乃、、、?」

先に声を発したのは、目の前の人物だった。

「えっ、、、慎二(しんじ)、、、?」

私はパニックになりながらも、目の前に突然現れた昔の恋人の姿に絶句した。

車椅子、、、

なぜ、消えたはずの慎二が、今目の前にいるのか、、、?

なぜ、彼が車椅子に乗っているのか、、、?

「姫乃、、、久しぶり、、、」

慎二は、気まずそうに私に声をかけた。

「うん、、、」

もう会うことはないだろうと思っていた人物と突然の再会だっただけに、私の頭は何も考えられなくなっていた。
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