ズルくてもいいから抱きしめて。
「家族になりたい!」
「家族になろうか!」

それはほぼ同時だった。

「えっ?樹さん、、、今なんて?」

「だから、“家族になろう”って言ったんだよ。本当はこの休みにきちんとプロポーズするつもりだったんだ。それがこんなことになって、しかもお前に先に言われてダセーよな。」

そう言って、樹さんは不貞腐れながら頭をかいた。

「ううん、、、すごく嬉しい。私、樹さんとずっと一緒にいられる証が欲しい。」

「そっか、、、お前も同じ気持ちだったんだな。姫乃、ちょっとここに座って。」

私は、樹さんに指定されたベッドの縁に腰掛けた。

樹さんは徐にベットサイドに置いてあった鞄から何かを取り出し、それをパカっと開くと、そこにはダイヤの付いた指輪が入っていた。

「姫乃、、、俺と家族になって。お前のこと、世界で2番目に幸せにしてやるから。」

「1番じゃなくて2番なの?」

「1番は俺に決まってるだろ。お前と一緒にいられるだけで、俺は世界一幸せなんだよ。だから、お前は2番目。」

樹さんらしい言葉に、私は自然と笑みが溢れ、先程までの不安でどん底だった気持ちが嘘だったかのように、今はとても温かい幸せな気持ちになれた。

「じゃあ、私を世界で2番目に幸せにして下さい。」

私が左手を出すと、樹さんが薬指にそっと指輪をはめてくれた。

私と樹さんは、これから“家族”になる。

これからも、ずっとそばにいられる確かな証拠。

左手にあるその輝きと同じように、私の未来も明るく照らされたようだった。
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