ズルくてもいいから抱きしめて。
「本社の方に資料整理なんて手伝わせてしまって、本当にすみません。」

「いえいえ、出張の日程にかなり余裕あったんで、これぐらい平気ですよ!」

「いや〜ほんと助かります!人手が足りなくて、資料整理まで手が回らなかったんですよ。」

出張で支社にやってきた俺が、なぜ資料整理なんて雑用を手伝っているかというと、、、

プロポーズを決心し、正直ソワソワして落ち着かないからだ。

同棲生活は順調で居心地も良く、互いに想い合っている実感はある。

結婚について話をしたこともある。

まず断られることはないだろう。

だが、一生に一度のプロポーズをヘマするわけにはいかないし、男として格好をつけたいと思うのは当たり前のことなのだ。

それなのに、俺は資料整理でも手伝っていないと落ち着かないなんて、ダサ過ぎて情けなさ過ぎて姫乃には絶対に言えない。

「天城さん!すみません、ちょっとだけ脚立押さえてもらってて良いですか?」

「はい、良いですよ!かなり上のほうですね。山口さん、気をつけてくださいね。」

「ありがとうございます。、、、うわ、これ結構重たいな、、、。よっと、、、あれっ、、、うわっ!あっ!天城さん避けて!!」

「山口さん!危ない!!」

山口さんが脚立から落ちそうになり、俺は助けようと一歩前に踏み込んだ。

、、、ドスンッ!

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