夫婦未満ですが、子作りすることになりました
「あのさ、うちの両親、とくに母親は非常識な人だけど驚かないでほしい」
「非常識?」
運転中の彼はまっすぐ前を見つめながら、初めて見る不安げな表情に変わる。
「ああ。やたらと理想を持ってるみたいで、失礼なことを口走ると思う。怒っても直らない。俺はあの人にはまったく賛同してないから凛子も真面目に取り合わなくていい」
よくあることだ。大企業を経営するご家庭は一般人とは違う考え方を持っているだろう。どこの馬の骨かもわからない私を警戒したっておかしくない。
「最初は誰だって反対しますよ。零士さんは大事な御曹司なんですから」
相手が若葉さんのようなお嬢さまから私になったのだから、余計に。
「いや、反対はしていない。むしろ……」
さらに言葉を濁した零士さん。
「……ごめん。とにかく、母を矯正させるには時間が必要だから、今はなにを言われても無視してほしい」
「わかりました。零士さんがそうおっしゃるなら気にしません」
パーフェクトな零士さんと婚約するんだもの、多少の障害はつきものだろう。なぜ自分が選ばれたのかがはっきりしている今、私は妙に余裕があった。遺伝子は消えてなくならないから。