夫婦未満ですが、子作りすることになりました
『御曹司の話でしょ? あれからどうしたの?』
明日菜の言う通りになったのが少し悔しい。けど、彼女のおかげで私は自分の考えの浅さを自覚できたのだ。
「別れることにしたの。いろいろ考えて、愛されていないのに子作りして結婚しても、きっと誰も幸せになれないから」
私の話を聞いた明日菜は少し黙り、『うん。それがいいよ』とやわらかくつぶやいた。
「でも、いざ伝えようと思ってもなんて言ったらいいかわからなくて」
『どうしてよ。思ってることそのまま言えば?』
「うん……。でも、いざ彼に会ったらうまく言える気がしない。まだ好きだし、自分の頭でもまとまってないのに」
あわよくば明日菜に別れの言葉をテンプレートのように教えてもらいたかったのだが、さすがにそれはホイホイと教えてはくれなかった。しかし彼女は楽しげな声色に変わり、
『よし! じゃあ私もそっちに行くから、彼に来てもらいなよ!』
と張り切りだす。