夫婦未満ですが、子作りすることになりました

『御曹司の話でしょ? あれからどうしたの?』

明日菜の言う通りになったのが少し悔しい。けど、彼女のおかげで私は自分の考えの浅さを自覚できたのだ。

「別れることにしたの。いろいろ考えて、愛されていないのに子作りして結婚しても、きっと誰も幸せになれないから」

私の話を聞いた明日菜は少し黙り、『うん。それがいいよ』とやわらかくつぶやいた。

「でも、いざ伝えようと思ってもなんて言ったらいいかわからなくて」

『どうしてよ。思ってることそのまま言えば?』

「うん……。でも、いざ彼に会ったらうまく言える気がしない。まだ好きだし、自分の頭でもまとまってないのに」

あわよくば明日菜に別れの言葉をテンプレートのように教えてもらいたかったのだが、さすがにそれはホイホイと教えてはくれなかった。しかし彼女は楽しげな声色に変わり、

『よし! じゃあ私もそっちに行くから、彼に来てもらいなよ!』

と張り切りだす。
< 78 / 104 >

この作品をシェア

pagetop