夫婦未満ですが、子作りすることになりました
「マスター、なにかわかったなら教えてください」
バッグからラベンダー色の手帳をとり出し、ボールペンを構えた。日常の気づきにはメモをとる。
「凛子ちゃん。男の人はプライドの塊ですからね。知識があっても口に出したらダメなんですよ。たとえ相手が間違っていても気持ちよく話してるところに水を差しちゃいけない」
メモをとるつもりだったが、納得がいかず大きなクエスチョンマークを描いた。
「それは……知らないふりをするということですか? 間違いを指摘しなければその後困るのは本人なのに?」
「そうなんだけど、きっと恋人にそういうことを求めてないんですよ。難しいですね。男は幼稚なんだろうなぁ」
なんてこと。知らなかった。男女間にそんなルールがあったとは。マスターから聞かなければ学べなかった貴重な情報だ。私はサラサラと【知らないふりをする】とペンを走らせる。
しかし書ききる前に神代さんの手が伸びてきて、ペンごと私の手を掴んで止めた。
「そんな男は相手にするな」