夫婦未満ですが、子作りすることになりました

「え? え? あの?」

いい匂いにくらくらするが、ソファの上でどうにか姿勢を立て直した。若葉さんが膝の上から退く様子がないため、しばらくして零士さんが「こら」と注意してくれ、彼女はしぶしぶ私の隣に座り直す。

ここでお母様が不思議そうに口を挟んだ。

「ねえ零士。凛子さんは若葉ちゃんと知り合いだったの? お母さん全然知らないんだけど」

私も教えてほしい。お母様は零士さんに質問したのに、若葉さんがうれしそうに答える。

「凛子さんは、私の命の恩人なんです」

彼女はまた私の腕に絡んできた。困った顔で零士さんに助けを求めると、彼なぜか立ち上がり、どこかへ行ってしまう。しかしすぐに戻ってきて、その手に緑の小さな薄い冊子を持っていた。

「これ、覚えてないか?」

彼はそれをテーブルに置き、私は手にとって観察した。

冊子の表には【救命救急の手引き】とプリントされ、裏には【春川凛子】とボールペンで書かれている。

ああ、そうか。思い出したーー。
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