最後の一夜が授けた奇跡
玄関の外から律樹が走って扉に近づく音が聞こえてくる。

そして『ガチャッ』という音共に玄関の扉が開けられた。

「季里っ!」
玄関にしゃがみこんでいる私を見て、律樹は慌てたように私を抱きしめる。
あの夜から一か月以上たっている。

ずっとずっと求めていた律樹のぬくもり。
すでに懐かしさを感じてしまうような律樹のぬくもりに包まれて、私は子供みたいに声をあげて泣いた。

だめだとわかっていても、こらえきれない気持ちが一気にあふれ出して止まらない。

一度あふれ出した想いは抑えることなどできなかった。

「けがは?大丈夫なのか?」
部屋を見てすべてを悟った律樹が私の体を確認するように少し体を離す。
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