最後の一夜が授けた奇跡
私はなんて馬鹿で弱い人間なんだと思いながら、少しの距離も今は離れたくなくて、首をぶんぶんとたてに振りながら律樹の体に抱き着いた。

「ばかっ!なんですぐ連絡しないんだよ!」
本気で怒ってる律樹の声。

できるわけないじゃないと思いながらも、やっと心から安心できるその場所で、私は泣き続ける。

「ばか・・・」
そう繰り返しながら律樹は私の体を自分の体で包み込むように、守るようにしながら抱きしめてくれる。


何度も何度も律樹は私に「ばか」とささやく。

その言葉に、愛情も心配も詰まっていることが私にはわかってしまう。

私たちの気持ちはまだ・・・離れ切れていない・・・。
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