紅一点
 

『なぁ…今って子の刻だよな?
遊郭でもあんの?
すっげぇ明るくね?』

『このあたりは繁華街だよ。
遊郭街と…似たようなもんかな。
一晩中灯りがついてる。』

多分、間違った情報ではない。
風俗街であることは
間違いない。

弁護士が決めた撤収期限の
夜明けまでに作業を終了すべく、
我が家に向け歩き始める。

我が家…秘密基地…倉庫?
と言うべきか…

バイト先のキャバクラから
なるべく近い立地と安価を
条件に選んだ、セキュリティ
最低の我が屋は、
割とヤバめの場所にある。
事故物件並みレベルの
物件じゃないだろうか。

とりあえず、雨風凌げるのだ。
それでいい。上等だ。

『なぁ、あれナニ?あの城街。
城下町は見たことあるけど
なんで、城が密集してるんだ?』

客引きと職質、半グレの一味を
避ける為、メイン通りを外れた
裏道の更に裏道を通り
コソコソ進むが、目の端に映る
異世界に好奇心をやられた
同行者から質問が飛ぶ。

『ん?ああ。ラブホだよ。
えーっと、いかがわしい事を
いたす所。』

比較的ソフトな説明をする。
しかし、案外、このオトコ
育ちが良いのだろうか。

『…オマエ、学生って
言ったよな?恥ずかしげもなく
よく平然と答えてんな。』

そう言って、私のデコに
一撃を加えるのだ。

『何いってんの。向こうの
世界はしらないけど、ここじゃあ
大人しそうなフリして、
AVさながらな事してる奴は、
山ほどいるよ。恐ろしい。』

『AVって何?』

…いや…このオトコ

新しい世界に
興味津々なんだろうな。
こちらに、恥じらいを求める
割りに、際どい質問を
ガンガン投げてくる。



 
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