紅一点
  

『ついた。この2階
突き当たりの部屋。
静かに行ってよ。壁薄いし
階段鉄板でウルサイから。』

二人で気配を消しながら、
一階の部屋の扉の前を歩く。
前述の通り、壁の向こう
そこかしらの部屋から
嬌声が漏れてくる。

『ここって連れ込み宿?』

リサイクル屋が、
微妙な表情をする。

…まぁ、そうも思うだろう。

『違う。本来、健全な…
未成年が住まう様な場所では
ないってだけで、普通の借家。』

リサイクル屋が、私から
没収していた鍵で
部屋の鍵を開錠する。

2人で、扉の隙間から
室内を覗いてみる。

『よかった。まだここには
アイツ等来てないみたい。』

『すぐ逃げられる様に
履物は脱ぐなよ。』

リサイクル屋の助言に従い
私達は土足のまま、
一間の屋内に入る。

私は押入れの襖の奥から
荷運び用にスポーツバックを
ひっぱりだした。

少ない荷物ながらも、
殆ど鞄には入らないだろう。
ハナから持ち出しは
諦めている。

『オマエ、私財ってこれだけ?
っつーか、この着物なに?』

押入れを占領する
バイト用のドレスを見て
彼は首を傾げている。
  

  
 
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