紅一点
3章 side ハオ
この世界に来て
わかったことがある。
インターネットが
ムコウの世界と
つながっている。
お陰様で、仮想通貨を
奴らに回収される前に
雅也の弁護士事務所が
管理する金融口座に
送金させる事ができた。
そして、池田屋さんは、
今日も変らずキレイなお姿で、
淳之介が経営する
カフェのカウンター席で
移動端末…いわゆる
タブレット端末みたいなモノを
操作している。
お昼時を過ぎた店内は
他にお客さんもおらず、
淳之介が奥で休憩している間
私が店番をしている次第だ。
淳之介は、今頃、
私が握ったおにぎりを
フォークとナイフで食して
いることだろう。
この姐さんは、常に
タブレット端末を触っている。
何をしているのか尋ねれば、
資産運用やネット検索を
しているそうだ。
単なるネット中毒者か?
と思えば、この人に限っては、
そんな事はない。
タダでは転ばないというか、
スゴイのだ。
…とにかくスゴイ。
この世界と、向こうの世界が
同じインターネットで
繋がっていたと気づいたのも、
彼女だ。
池田屋さんは、
自分が気づく位だから、
この事実を知っている人間は、
一定数いて、そういう人間が、
双方の世界を媒介していると
想定できると言う。
この世界は、私の居た世界から
限定された一部のシステムや文化が
切り取り持ちこまれ、
独自の進化をとげたものの様だ。
だから、電子空間を漂流すれば、
買い物もできて、向こうの世界から
商品も届くし、私が通ったような
通路的なものが他にもあると
言っていた。