紅一点
「でも、それって、
悪用すると怖いよね…」
思わず呟けば。
「あら、ハオどおしたの?」
池田屋の姐さんは、
小首を傾げる。その儚い
美少女ぶりときたら!!
「いや、向こうとこっちを
つなぐ通路を、悪用する奴が居たら、
怖いなぁって思って。」
そんな、漠然とした
思いを告げると同時に
ドアベルがよい音を立てた。
「いら…」
“いらっしゃいませ”と言いかけ
途中で止める。
何故なら、相手が
雅也だったからだ。
「痛って!!」
そして、ヤツも些細な事は
気にもとめず、私の額に
本気のデコピンを食らわした。
目の前がチカチカするんですけど!
「小娘、いつものでいい。」
ぞんざいな注文の仕方をして
池田屋さんの隣に座る。
「それでハオ、悪用って?」
挨拶もソコソコに、
姐さんは、さっきの私の発言の
真意を尋ねた。
「うん。双方を往来できるって
事は、こっちから誰かを攫って
行く事も可能だよね。
しかも、向こうの方が、重力も
厳しいから、逃げ出す事だって、
一苦労だと思うんだよね。」
漠然と抱いた思いを言葉にすれば
意外にも、弁護士が賛同をした。
「向こうで、一定の成果や
ポジションを得た人間が、
わざわざ異世界で、新たな文明を
構築しようとするとは思えない。
普通に考えて、向こうで
あぶれたヤツが、何かの偶然で
汚ねぇ金で旨みを得たとか、
他所で己が帝国をこしらえたと
考える方が自然だろうよ。
まあ、実際、この世界でも
行方不明になる人間は居たし、
あの横穴を見てしまえば、
これまで思いもしなかったが、
誘拐だってその気になれば
可能だろうがな。
コイツがマネキンを
くすねた様に。」
…まだ、マネキンに拘るか…
すげぇな…
あのマネキンの
ポテンシャル…